春を待つ 俺はジャミラス Aランク

日々の苦しい労働は無理やり強いられているものではなく、自らの生活を守るため、少しの娯楽を味わうための選択に過ぎない。

君たちはこの対価に何を求める？………へぇ、まぁどうでもいいよお前らとか。買ってから3時間経ったマックポテトくらいどうでもいいわお前ら。クッソしなしなになってパッサパサ、あれだよ今の俺の気持ち、分かるか？

買いたいものとかやりたいこととか色々あるよね。無い人もいるかも知れんけど、そんな人は大抵妻子持ちか貯金好きだろ。そんな中でもさ、過酷な労働の末にどんな人間でもすべからく考えてしまうことがあるんだよ。

そう、仕事が終わってひと段落。空が暖色の灯に包まれる黄昏時、未だに居心地の悪いスーツに1日の疲れが糊の様に纏わりついて、無性に喉が乾き腹が減る。

人はこう思う。

「焼き鳥食いてぇ」

こんな時に食べる焼き鳥は次元が違う。マイキーの蹴りとタケミッチの蹴りくらいの違いがそこにはある。焼き鳥卍リベンジャーズ。

壱番隊隊長、レモンサワー。こいつは欠かせないだろう。誰だビールとか言ってる奴は。気取ってんじゃねぇよあれ腐った麦茶みてーなもんだろ。何が「あ、生人数分！…みんな生だよな？(笑)」だ笑ってんじゃねぇぞ。注文してから確認すんなアホが現場猫とやってること変わんねぇからな？ビール好きならいいけど俺は嫌いなの。飲めませんよ。なんなら酒がそもそも好きじゃねぇ。「ビールグビっ、プハー、え？カシオレ？女かよ！(笑)」殺すぞ。流石のSUSURUも厨房に入ってしまうわ。酒に酔って自分に酔ってよりにもよって馬鹿にしてくるとは。どう今の韻？よくね？ってか誰が初めたのあの風潮。若い女の子とかも最近では「一杯目はビールにしようかな…」とか意味不明なこと言い出すし。なに一杯目はって。意味あんのそれ？医学的メリットは？一杯目は美味しい？それ、あなたの感想ですよね？？？そんなもん飲むより絶対ジンジャーエールの方が美味いし健康に良いよ。知らんけど。

レモンサワーを一口飲んで、鶏モモ(塩)を食う。はぁ〜〜〜？？？？？？革命だ。配牌で既に勝負は決まっていた。約束された勝利。そうか、これが聖剣エクスカリバーだったのか。この鳥は生前、さぞ高名な鳥だったのだろう。他の鳥とは一戦を画した羽ばたきを見せ、溢れんばかりの才能で他を寄せ付けず、それでいてどこか親しみやすさを感じる。後輩鳥達にも慕われるよき先導者。ありがとう、自然と感謝の気持ちが口から溢れる。まさか焼き鳥になるために生まれてきたのかと思わせるほどの完璧な焼き鳥。完璧な焼き鳥は、食べられるその瞬間のTPOすら弁える。鳥界隈では常識だ。

続くはぼんじり、こちらはタレでガッツリといただく。今までの疲れは既に消えた。食べる度に回復していく永遠なる癒し、アモールの雨。ジャミラスに覚えさせて回復しながら永遠にAI2回行動させていたなぁ。今思えばジャミラスも過酷な労働に耐えていた。ドラゴンクエストジョーカーは未来の働き詰めの自分の姿をモンスターのようだと揶揄していたのかも知れないな。ごめんジャミラス。ごめん…

俺は焼き鳥に教えられた。自分が惨めで愚かな存在だということに。仕事終わりのこの時間に焼き鳥に自らの在り方について考えさせられる社会人。冬の外は暗く、体が縮こまる。風で舞う枯葉も、どこか寂しげで、まるで心の拠り所を探している様だ。この枯葉もまた、未来の自分を揶揄しているのかも知れない。いいや違う。この枯葉を踏みしめて、俺は進む。胸に手を当て、食べられた鳥達に想いを馳せる。お前達の想いは俺が繋いでいくよ。

俺は一歩、"大人"になれた気がした。